ダイヤモンドライクカーボン薄膜製造装置

ナノテック(千葉県柏市)は2004年2月に「ダイヤモンドライクカーボン薄膜製造装置」で、第29回発明大賞笹川特別賞を受賞した。均質で密着性に優れるダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)膜を量産する技術について、日本で初めて特許を申請し、確立した功績が評価された。中森秀樹社長は「受賞により信用力が上がり、市場が大きく拡大するきっかけになった」と振り返る。07年には「瞬間着火型ホローカソードガン」で発明大賞発明功労賞を受賞。09年の春の褒章では40代の若さで黄綬褒章を受章した。 DLC薄膜製造装置「ナノコート」シリーズの第1号機を開発したのは90年のこと。学生時代に高温プラズマの研究を通じて、炭素膜の存在に着目。「ダイヤモンドのように硬く、グラファイトのように滑らかで摩擦係数が少なく、軽く、化学反応を起こしづらい膜があれば、保護膜などとして工業的に使えるのではないか」と、成膜装置の開発を目指した。 当時、工具メーカーや研究機関の関心はダイヤモンドの薄膜化。しかし、母材との密着力がなく、高温下でないと作れない。このため、母材が溶けてしまうほか、滑らかな表面を得られにくい―など実用化は難しい状態だった。DLCはこれらの課題を解決する技術だったが、存在が知られておらず、学会や展示会で発表するも「ダイヤモンドと比べて下に見られていた」。意欲的な熱処理業者や溶射業者が装置を購入する程度だった。 転機となったのは99年8月に発売した「PSII型装置ナノパルスシリーズ」。高温プラズマを瞬間的に使うことで膜と母剤の間に中間層をつくり、密着性を大幅に向上した。これにより、工具や部品へのコーティングが主だった用途が、金型の長寿命化などコーティングの活用範囲が大幅に広がった。 中森社長は現在、ニューダイヤモンドフォーラム(茨城県つくば市)が経済産業省の委託を受けて進めるDLCの標準化事業で、プロジェクトリーダーを務める。自身が広めたDLC技術。今度はその技術の国際標準化を、自ら推し進めている。【現実の世界で遅れ】 現在、インターネットなどサイバースペースにおける購買では、消費者の属性や購買パターンなどの情報が綿密に収集され、それを基にさまざまな販売促進活動が行われている。一方、現実の世界(リアルワールド)では、消費者の購買パターンどころか属性すら十分には把握されていない。 リアルワールドでの消費財の購買は消費者購買総量の80%を占める。それほど圧倒的な量を占めているにもかかわらず、消費者情報の把握は商業施設での目視やセンサーによる単なる人数の計測に留まっている。しかも消費者の満足度に至っては、アンケートがなされている程度にすぎない。 広告宣伝や販売促進の場でも似たような状況にある。つまりサイバースペースでは、販売促進用に配信されたコンテンツは、ユーザーの端末上でのクリック数や再生回数などによって一応ユーザーの反応が計測されている。 これに対して電子看板(デジタルサイネージ)をはじめとするリアルワールドのコンテンツについて、その視聴者数・視聴者反応といったものはほとんど把握されていない。 【垂れ流し改める】 このような現状から、当社はデジタルサイネージの視聴者数や視聴者の反応を計測するシステム(商品名FG―Signage)を開発した。これは、デジタルサイネージとカメラ、そしてFace Grapherと命名した顔認識/属性分析ソフトウエアを融合させたもので、映像コンテンツを画面に映すと同時に、その視聴状況を自動計測する。これにより、その映像コンテンツの視聴者数や男女比/年齢分布/反応を捉え、コンテンツの人気度や注目度といった指標が得られる。 日本のデジタルサイネージ産業は4―5年前に大きな話題となり、多くのベンチャーも起業した。しかし、今ではその熱も冷め、世界の中で大きく遅れてしまった。この最大の要因として視聴状況が不明、つまり効果が不明瞭なためという声を多く耳にする。誰も見ていないコンテンツを垂れ流し的に配信する現状を改めれば、日本のデジタルサイネージ産業には新しい成長の扉が開かれ、大きな市場を形成すると考えられる。 【民間技術を事業化】 Face Grapherの中核技術は、実は事業化を目指して日本の大手企業から産業技術総合研究所へ移管されたものだ。民間企業で眠る技術シーズを公的機関で孵(ふ)化させベンチャー化し、事業として成功すれば民も公も知財収入が得られる。まさにウィン―ウィンの展開となる。 こうした取り組みが、産総研初のチャレンジとして当社で実施されている。当社でよい前例を作り、今後の流れにつなげたい。 (木曜日に掲載) ◇サイトセンシング代表取締役 平林隆 1992年MBA取得後、経営コンサルタントとして活躍。04年にCendantジャパン代表取締役CEOを歴任。08年産総研に入所し、技術シーズ・知財の事業化を手がけるスタートアップアドバイザーに就任。プロジェクトリーダーとして自ら事業化を担当した顔認識ソフトウエアを基に、12年6月サイトセンシングを設立し、代表取締役に就任した。

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